
「生成AIを入れたのに、売上の話になると沈黙する」——DX推進の会議で、そう感じたことはありませんか。IT部門のリーダーも、人材派遣やIT派遣の現場で働く人も、同じ数字を別の意味で読みがちです。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の報告書「DX動向2026」は、国内企業1,799社への調査です(実施期間は2026年4月17日から6月12日)。生成AIの導入は広がっています。一方で、実感されている効果の中心は業務効率化です。売上や利益まで届いた、と答えた割合はごく小さい。
派遣相談室 XWORX は、特定の派遣会社への登録を勧めるメディアではありません。DX推進とIT人材育成の話を、人材派遣・IT派遣の働き方に翻訳して整理します。派遣の三者関係(派遣元・派遣先・就業する人)は、派遣会社に登録する前に知っておきたい15のこと|初めての人材派遣で後悔しない完全ガイド が入口です。
出典は IPA「DX動向2026」広がるAI導入、DXは変われるか です。数字は報告書の図表番号を添えます。自社や求人にそのまま当てはまる、とは言いません。
この記事でわかること
- 生成AIとDXの成果が、業務効率化に偏っている理由(母数の取り方を含む)
- 効率化と価値創出で、IT人材育成の中身がどう分かれるか
- 人材派遣・IT派遣で減りやすい作業と、残りやすい作業
- 企業が欲しいと言いながら足りない、ガバナンス・定着・内製の人材像
- 働く側がスキルシートに書ける、持ち運びやすい確認の習慣
求人数が増える、減る、といった保証はしません。地域・業種・時期で変わります。
生成AI DXの数字——業務効率化91.6%、売上や利益は3.9%
検索でよく並ぶ「効率化9割、売上は数パーセント」は、全企業の割合ではありません。先に母数を置きます。
AIを導入または試験利用し、何らかの効果を実感した企業が挙げた効果の内訳です。「業務が効率化したり迅速化した」が91.6%、「売上や利益が向上した」が3.9%です(図表3-14)。顧客満足度の向上は4.5%、企画提案の品質や速さは48.9%、残業時間の削減は29.2%です。
DXそのものの成果でも、向きは近いです。コスト削減は70.9%、売上高増加は17.9%、利益増加は19.6%です(図表2-6)。社内の工数は動く。顧客が払う理由は、まだ動きにくい。報告書の副題は「広がるAI導入、DXは変われるか」です。
導入は止まっていません。生成AIを「導入している」は、前年調査の22.6%から44.0%へ伸びています。AIの導入または試験利用は合計58.0%。投資が増えている企業は51.3%です。導入・試験利用企業のうち、期待どおり以上は31.8%、「一定の効果はあった」が50.6%です(図表3-13)。入った。動いた。劇的ではなかった。その温度が平均値です。
現場では、競合が入れている、時短は見える、「やっていない」とは言いにくい、という順番になりやすいです。効果の中身が内向きでも、導入しないリスクの方が先に見える。DX推進の担当者が抱えやすい、よくある形です。
業務効率化と価値創出は別物——IT人材育成の中身が分かれる
業務効率化は、同じ仕事を短くすることです。価値創出は、顧客が払う理由を増やすことです。混ざると、KPI(成果指標)が社内の工数だけになります。測るものが効率化なら、集まる人も効率化用になります。IT人材育成の中身も、そこで分かれます。
IPAでは、DXの成果指標を設定している企業は23.9%です。設定している企業でも、対象は「内向きの業務改革」が80.0%、「経営改革」は16.3%です(図表2-15)。生成AIの使い方も同じ型です。「個人で業務利用」が63.3%。部署の業務プロセスへの組み込みは11.9%、全社サービスへの組み込みは18.6%です(図表3-6)。文書の要約、下書き、調べ物。個人の時短は進む。商品や顧客接点は、まだ遠い。
人が担う重心は、タイピングと転記から、捨てる・疑う・載せる・守る、へ移ります。人材派遣の事務も、IT派遣も、同じ方向です。事務側の整理は AIで事務派遣はなくなる?生成AI時代に変わる仕事・残る仕事・必要なスキル 、学びの順序は 派遣社員こそDXスキルを身につけるべき?AI・Excel・デジタル活用で変わるキャリア です。
DX推進人材の「量」が不足している企業は85.5%、「質」は88.8%です(図表4-1、図表4-3)。人材像を社内に周知している企業は16.2%。評価基準がない、は76.1%。必要なスキルを把握できていない、は52.8%。人が足りない、と言いながら、欲しい人の定義が社内にない。IT人材育成の予算を「増やした」企業は25.6%にとどまります。不足感と育成投資が、かみ合っていません。
人材派遣・IT派遣で減りやすい仕事、残りやすい仕事
仕事そのものが一夜で消える、とは書きません。減りやすいのは、手順が固定で、正誤が機械でも分かる作業です。残りやすいのは、判断と説明が残る作業です。
| 向き | 作業の例 | 生成AI・自動化との関係 |
|---|---|---|
| 減りやすい | 単純テストの反復、文言コピー、読まずに貼るコード補助、確認なしの一次回答 | 下書きは速い。確認を外すと事故と品質低下が同時に起きる |
| 残りやすい | 要件の聞き取り、例外の切り分け、出力の検証、情報の境界、現場と経営の翻訳 | ツールは補助。責任と説明は人に残る |
| 事故になりやすい | 機密・個人情報をプロンプトに入れる | 仕事の巧拙以前に、就業先の情報管理に抵触しやすい |
IT派遣の入口は、いまもヘルプデスク、テスト、データ処理にあります。未経験から入れる案件はある一方、「準備不要」ではありません。仕組みは IT派遣とは?未経験でも働ける?仕事内容・必要スキル・将来性を解説 です。
SES(客先常駐型の技術者派遣)も、同じ圧力を受けます。工数を埋める常駐は、自動化と単価交渉の両方から揺れやすい。残るのは、客先の業務を理解し、生成AIの出力を業務に載せる人です。雇用は派遣元、日常の指示は派遣先、という三者関係は変わりません。
AI導入・運用の課題の一位は「専門人材が不足している」50.1%です。次いで、効果やリスクの理解不足45.8%、利用ルール作成の難しさ39.7%です(図表3-16)。消えるのは人ではなく、確認なしの作業です。40代・50代でも、全部をエンジニアにする必要はありません。確認と翻訳から足せます。40代・50代から派遣で働くなら何を身につける?AI・DX時代の仕事選びとリスキリング
栃木県・小山市を拠点に人材派遣を見る場合も、話の芯は同じです。工場や事務、IT支援のどれに入るかで一日の中身は違います。産業と仕事の見え方は 栃木県・小山市ではどんな派遣の仕事がある?地域の産業から考える仕事選び を参照してください。
DX推進で企業が欲しい人材——ガバナンス、活用定着、内製化
欲しい、と言いながら定義がない。調査が示す不足はどこか。
AIのポリシーもガイドラインも、どちらも定めていない企業は16.7%です。独自のリスクマネジメントを実施しているのは14.2%です。導入の主導はIT部門の長が46.0%、CAIO(最高AI責任者)は2.9%です(図表3-17、図表3-18、図表3-23)。ツールは現場に降り、守りは後追い。その隙間に、人が要ります。
個人利用のままだと、使い方が属人化します。業務に載せる人、教える人、使わない理由を潰す人がいないと、ライセンスだけが残ります。これが、業務効率化91.6%と売上3.9%のあいだにいる、よくある風景です。
内製化は、全部を自社開発することではありません。外注と人材派遣を使いながら、判断とデータの所在を社内に残すことです。丸投げが増えると、売上に届かない効率化が固定します。IPAが不足感の高いままとしているのは、現場の知見と基礎的なAI知識で導入を進められる人、データマネジメントを企画できる人、です。経営層のAI理解は、相対的に改善しています。現場とデータの層が、まだ薄い。
事務寄りのスキルセットは AI時代の「事務派遣」に必要なスキルとは?これから求められるAI事務人材を考える が近いです。
働く側が持ち運べるIT人材育成——確認をスキルシートに書く
XWORX編集部は、生成AIでDXが終わる、とは見ていません。終わるのは、「入れたこと」を成果にする進め方です。人材派遣で就業先が変わっても残るのは、確認の習慣です。
| 優先 | 持ち運ぶもの | やり方の例 |
|---|---|---|
| 高 | Excelと表の設計 | 関数1つ、ピボット、列の意味を先に決める |
| 高 | 情報管理 | 個人情報・機密をAIに入れない。就業先の規程が正 |
| 中 | 生成AIの下書き | 要約・メール下書きまで。出力は人が見る |
| 中 | 業務の言葉 | 「何を捨てたか」「何を確認したか」を一文で言える |
スキルシートには、ツール名の羅列より、「何を確認したか」を書いてください。企業側は、効率化の担当か、顧客価値の担当かを一文で定義してから「AI人材」と募集した方が、時短できる人だけが集まる状態を避けやすいです。3.9%側へ寄せるなら、ガバナンス、定着、内製の判断が残る人を先に置く。それがIT人材育成の実務です。
経済産業省の デジタルスキル標準(DSS) は、業種を問わず必要なデジタルスキルの地図として使えます。個人向けの認定制度ではない点に注意してください。
よくある質問
生成AIを入れればDXは終わりますか
終わりません。導入は前提に近づいています。終わるように見えるのは、時短だけを成果にしたときです。IPAの数字も、効率化は高く、売上や利益は低い、という偏りを示しています。
人材派遣やIT派遣の仕事はなくなりますか
働き方そのものが短期間で消える、とは考えにくいです。中身の比率は変わります。確認・調整・説明の比重が上がりやすい。求人の増減は断定できません。
IT派遣未経験でも、生成AIの勉強は必要ですか
必須資格ではありません。下書きと要約を、就業先のルールの範囲で安全に使える人は評価されやすいです。機密を入れない、出力を疑う、が先です。
企業はどんなIT人材育成を急ぐべきですか
ツール研修だけより、人材像の一文、評価の軸、業務のどこに載せるか、です。量の不足を感じている企業は85.5%あります。周知できている人材像は16.2%です。足りない人と、欲しい人の定義が、まだすれ違っています。
まとめ
生成AIとDXは、人材派遣・IT派遣の現場でもすでに日常です。IPA「DX動向2026」が示すのは、業務効率化は届きやすく、売上や利益には届きにくい、という偏りです。IT人材育成の焦点は、入力速度から、確認と翻訳、ガバナンスと定着へ移っています。
次に読むなら、IT派遣の入口は IT派遣とは?未経験でも働ける?仕事内容・必要スキル・将来性を解説 、派遣全体の前提は 派遣会社に登録する前に知っておきたい15のこと|初めての人材派遣で後悔しない完全ガイド です。
関連記事
- AIで事務派遣はなくなる?生成AI時代に変わる仕事・残る仕事・必要なスキル
- 派遣社員こそDXスキルを身につけるべき?AI・Excel・デジタル活用で変わるキャリア
- AI時代の「事務派遣」に必要なスキルとは?これから求められるAI事務人材を考える
- 40代・50代から派遣で働くなら何を身につける?AI・DX時代の仕事選びとリスキリング
参考資料・出典
- IPA「DX動向2026」広がるAI導入、DXは変われるか
- IPA プレスリリース「国内企業のDX動向・AI活用動向のポイントを公表」(2026年7月16日)
- 経済産業省「デジタルスキル標準(DSS)」
- 厚生労働省「労働者派遣事業の概要」
情報について
本記事は2026年9月5日時点の公的情報と、IT・Web・DX領域の一般的な現場観察に基づいて執筆しています。調査数字はIPA「DX動向2026」(2025年度調査)の引用です。求人内容・派遣会社のサービスは会社・時期により異なります。個別の契約・条件は、必ず派遣会社および就業先の書面・担当者へご確認ください。
派遣相談室 XWORX|派遣会社に登録する、その前に。
生成AI、DX推進、人材派遣、IT派遣、IT人材育成について、登録前に知っておきたい記事を公開しています。最新一覧は 派遣相談室 XWORX からご覧ください。
特定の派遣会社への登録を目的としたサイトではありません。ご不明点は、管轄のハローワーク・労働局、または各派遣会社の担当者へ直接ご確認ください。
(c) 派遣相談室 XWORX

コメント